化学と歴史のネタ帳

身近にひそむ化学と歴史を,高校までの知識をベースに解説する化学史系ブログです.

化学史

滴定の歴史(9):沈澱滴定

沈殿反応は見た目にはっきりと変化があらわれるので,滴定にも用いられてきました. 沈殿滴定はどのように誕生したのでしょうか?また,沈殿滴定にも指示薬はあるのでしょうか?今回は水質調査,硝石産業,貨幣鋳造,ハーブウォーターなどを題材に,沈殿滴定…

滴定の歴史(8):酸化還元指示薬

過マンガン酸カリウム溶液やヨウ素溶液のように色がはっきり変化する場合は良いですが,色が変化しない酸化還元反応はどうすれば良いでしょうか?今回は酸化還元滴定の幅を広げた,酸化還元指示薬の歴史をみてみましょう.

滴定の歴史(7):過マンガン酸塩滴定

過マンガン酸カリウムを用いる滴定,過マンガン酸塩滴定は色がはっきり変化するので化学実験でもよく取り上げられます. 過マンガン酸塩滴定はどのように誕生したのでしょうか? 今回は鉄工業や硝石産業,水質調査と関わりの深い過マンガン酸塩滴定の歴史を…

滴定の歴史(6):ヨウ素滴定の発展

ヨウ素滴定には大抵の場合,チオ硫酸ナトリウムが相棒として登場します. チオ硫酸ナトリウムを使うようになったのはなぜでしょうか? ダゲレオタイプのカメラ今回は写真撮影や水質調査を題材に,チオ硫酸ナトリウムとヨウ素滴定の歴史をみていきましょう.

滴定の歴史(5):ヨウ素滴定の開発

ヨウ素の酸化還元反応を用いた滴定を,ヨウ素滴定と呼びます.ヨウ素はデンプンとの反応ではっきり検出できるのが特徴です. ヨウ素デンプン反応を用いたヨウ素滴定はどのように成立したのでしょうか? 海草の収穫(北フランス) By Guy Courtois - Self-pho…

滴定の歴史(4):酸化還元滴定の発明

中和滴定と並び,代表的な滴定方法が酸化還元滴定です.反応式を組み立てるのに苦労された方も多いと思います. 酸化還元滴定はどのように発明されたのでしょうか? 今回は酸化還元反応の歴史を踏まえつつ,酸化還元滴定開発の様子をみてみましょう.

滴定の歴史(3):電極によるpH測定

pHを測定するには,pHメーターを用いるのがお手軽です. pHメーターはどのように開発されたのでしょうか? Beckman M型 pHメーター (1937) 今回はpHメーターをめぐる物語を紹介します.

滴定の歴史(2):中和滴定と水素イオン濃度

滴定を行う上では,中和反応がどこまで進行したかをモニターし続けることが大事です. 有名なのは紫キャベツの煮汁やリトマス試験紙の色変化ですが,他にはどんな方法が活用されてきたのでしょうか?今回はpHメーター開発以前のモニター方法について,原理と…

滴定の歴史(1):中和滴定の誕生

化学工業が発展した18世紀以降,酸やアルカリの量を知ることは原材料の品質を調べるうえで非常に重要でした.中でも中和反応を利用する中和滴定は未熟練者でも使える画期的な方法でした. 理科実験でお馴染みの中和滴定は,どのように誕生したのでしょうか?…

酸の歴史(9):フッ化水素酸

フッ化水素酸はガラスを溶かすことのできる酸として非常に有名です. フッ化水素酸はどのように発見されたのでしょうか? パリ万博(1867年)で優勝した,酸エッチングを活用したガラス作品 By Andre Carrotflower - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.…

酸の歴史(8):リン酸

リン酸は昔,骨から作られていました. 一体どのような方法だったのでしょうか?今はどのように製造されているのでしょうか? 1870年頃の骨灰工場 "Les merveilles de l’industrie, ou Description des principales industries modernes, vol. 3" p.537今回…

酸の歴史(7):塩酸

塩酸はかつて「海の酸」とも呼ばれました. なぜそのように呼ばれたのでしょうか? 13世紀頃から行われているアドリア海での製塩 (スロベニア)今回は塩酸の製造方法がどのように変化してきたのか,見てみましょう.

酸の歴史(6):オストワルト法

硝酸合成法は色々と開発されてきましたが,波に乗ることが出来たのはアンモニアを酸化するオストワルト法です. オストワルト法はどのように誕生したのでしょうか?そもそもオストワルトはどんな人なのでしょう? ファント・ホッフ(左)とオストワルト(右)今…

酸の歴史(5):硝酸と硝石

硝酸は高い酸化力をもつユニークな酸です. 硝酸にはどのような歴史があったのでしょうか? チリ硝石 By John Sobolewski (JSS) - http://www.mindat.org/photo-548175.html, CC BY 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=29139370硝酸塩で…

酸の歴史(4):染料と接触法

長い間使い道の少なかった発煙硫酸は,合成染料の登場により一気に品薄になりました. さらなる染料産業の発展のためには発煙硫酸の価格を安くする必要があります.そうして誕生したのが接触法です. アリザリン今回は染料産業の事情を通じて,接触法誕生の…

酸の歴史(3):鉛室法の発明

18世紀,鉛室法の登場によって硫酸が大量に製造されるようになり,漂白など様々な用途に使われました. 鉛室法とはどんな方法なのでしょうか? 鉛室法19世紀の化学工業を語る上で外せない,鉛室法のしくみと歴史を見てみましょう.

酸の歴史(2):錬金術と硫酸

硫酸をはじめとした酸は,錬金術において重要な役割をはたしてきました. その工業的製法も,はじめは錬金術で使われた手法から発展したものです. 《賢者の石を探す錬金術師》ジョセフ・ライト,1771年,油彩硫酸の製造方法の歴史について,まずは錬金術か…

酸の歴史(1):酸とはなにか?

酸とはなんでしょう?酸っぱい物質でしょうか?それとも水素イオンを放出する物質でしょうか? 「酸とはなにか?」という疑問は化学者が長い間取り組んできた問題でもあります. 紫キャベツ抽出液の色変化 By Alessandro e Damiano - Own work, CC BY 4.0, h…

アルカリの歴史(9):戦争とアンモニア

アンモニアは肥料の原料だけでなく,火薬の原料としても重要でした.よく,ハーバーボッシュ法の発明によってドイツは戦争を決断したという話があります. 本当にそうでしょうか? 朝鮮窒素肥料 興南工場今回はドイツ,イタリア,日本を例にハーバーボッシュ…

アルカリの歴史(8):ハーバー・ボッシュ法

「空気からパンをつくる」とも称されたハーバー・ボッシュ法は,現在でも活躍しているアンモニア合成法です. いったいどのような経緯で誕生したのでしょうか? Fritz Haber (1868-1934, 左)とCarl Bosch (1874-1940, 右)今回はハーバー,ボッシュそれぞれの…

アルカリの歴史(7):アンモニアと石灰窒素

刺激臭でお馴染みのアンモニアは,よくおしっこの臭いにも例えられますね.一方で,石灰窒素はあまり聞き馴染みがないと思います. アンモニアはどのように発見されたのでしょう?石灰窒素とはなんでしょうか? 石灰窒素工場 (1919, アメリカ)今回はアンモニ…

アルカリの歴史(6):塩化アンモニウム

刺激臭のするアンモニアは,理科実験で特に印象に残る化合物でした. アンモニアにはどんな歴史があるのでしょう? ソグド人商人(8世紀)今回からは4回に分けて,アンモニアの歴史をみていきたいと思います.まずは,塩化アンモニウムからです.

アルカリの歴史(5):電気分解

水の電気分解は,水が水素と酸素から出来ていることを知ることができる,とても良い実験です. ところで電気分解はどのように発見されたのでしょう? 電解法による工場 (アメリカ)今回は電気分解の発見から塩素・アルカリ製造への応用に至る歴史を,しくみと…

アルカリの歴史(4):カリウム塩

樹木灰に含まれる炭酸カリウムは長らく炭酸ナトリウムと同一視されていましたが,やがて独立した物質だと判明しました. Staßfurtのカリウム塩工場 By Unbekannt. Recherche:Dr. Günter Pinzke - "HUNDERT JAHRE STASSFURTER SALZBERGBAU", Anhang zu der an…

アルカリの歴史(3):アンモニアソーダ法

前回紹介したルブラン法は,やがてエルネスト・ソルベイが開発したアンモニアソーダ法,別名ソルベイ法(またはソルベー法)に取って代わられました. アンモニアソーダ法の工場 (New York, 1917)アンモニアソーダ法とはどのような製造法なのでしょうか? ま…

アルカリの歴史(2):ルブラン法

炭酸ナトリウムは様々な工業で必要とされ,やがて最初の工業製法であるルブラン法が開発されました. ルブラン法による炭酸ナトリウム製造炉(1890年)ルブラン法とは,どんな製造法なのでしょうか? 今回は,ルブラン法以前の英仏の取り組みや,ヨーロッパ…

アルカリの歴史(1):炭酸ナトリウム

炭酸ナトリウムNa2CO3はソーダ灰とも呼ばれるアルカリ性の物質です.古くはアルカリとも呼ばれた重要な物質で,ナトリウム (Natrium) やその英語名sodiumの由来とも密接に関わっています. 炭酸ナトリウムはどのように活用されていたのでしょうか? エジプト…

炎(15):アセチレン炎の利用

アセチレンを燃やした炎は,かなり高温で明るく輝くことが知られ,照明や溶接,分析技術などに幅広く使われました. アセチレン炎今回はアセチレンの用途を中心に,その歴史をみていきましょう.

炎(14):アセチレンの発見

1929年頃,スウェーデンの植物学者Henrik Gunner Lundegårdh (1888-1969) がブンゼンの元素分析法をもとに,炎光光度法と呼ばれる元素の定量分析法を開発しました.その際に燃料として使われたのがアセチレンです. 【参考】炎(13):ブンゼンバーナーC2H…

炎(13):ブンゼンバーナー

19世紀半ば,石炭ガスが普及したヨーロッパにおいて理科実験に欠かせない実験用ガスバーナーの原型が誕生しました. Needle valveつきのBunsenバーナー今回は実験用ガスバーナーの生みの親であるロベルト・ブンゼンを紹介しましょう.