化学と歴史のネタ帳

身近にひそむ化学と歴史を,高校までの知識をベースに解説する化学史系ブログです.

浄水(9):いろんな無機物の除去

水の中には様々な無機物が溶けており,ときには健康を害することもあります.

今回は沈殿反応やイオン交換といった水中の無機物を取り除く方法について,歴史としくみをみていきましょう.




浄水(1):にごりをとるには?
浄水(2):ろ過の歴史
浄水(3):ろ過や塩素による消毒
浄水(4):いろんな消毒方法
浄水(5):ガスを追い出すには?
浄水(6):活性炭・微生物の活用
浄水(7):化学の力で軟水にする
浄水(8):軟水化の歴史
浄水(9):いろんな無機物の除去
浄水(10):パイプを腐食から守る
浄水(11):フッ素で虫歯予防?
浄水(12):究極の水,超純水

1.水に溶けている無機物

水中に含まれている無機物は,ものによっては毒性があるので除去が必要です.まずは代表的な金属イオンついて,みてみましょう.


例えばカドミウムCdです.かつて富山県で問題となった四大公害病のひとつ,イタイイタイ病の原因ともなりました.

亜鉛鉱 By Ivar Leidus - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=98937561

カドミウム亜鉛鉱(Zn, Fe)Sに不純物として含まれ,亜鉛を精錬する際に不要物として出てきます.水源等に廃棄され,それを摂取してしまうと骨が軟化して骨折しやすくなったり腎臓など内臓に大きなダメージが出てきてしまいます


鉛Pbも毒性が高いです.古代ローマなどかつては飲むコップ水道管に用いられていたこともあり,鉛中毒はかなり身近なものだったようです.嘔吐などの中毒症状のほか腎臓などの内臓にダメージが蓄積し,脳障害や死産を引き起こします.


他にも毒性がある金属として,水銀Hgや六価クロムCr6+などがあります.水銀は有機反応に触媒として用いられていたことがあり,副生成物であるメチル水銀などの有機水銀が問題となりました.水俣病として有名ですね.六価クロムは地盤強化剤として用いられていた時期があり,土壌からの溶出が度々問題となりました.


金属イオン以外だと,様々な中毒を引き起こし毒性が非常に高いヒ素As,歯のフッ素症を引き起こすフッ化物イオンF-,ブルーベビー症候群などメトヘモグロビン血症を引き起こす硝酸イオンNO3-などが挙げられます.


ヒ素バングラデシュ井戸水に高濃度で含まれ問題となりました.日本でも宮崎県の土呂久鉱山で過去に問題となったようです.硝酸イオンは,1940年代の北米で肥料などから溶出したもので汚染された井戸水をミルクの調製に使い,チアノーゼにより赤ちゃんの全身が青くなるブルーベビー症候群が多く報告されたことで話題となりました.フッ素については別の記事で触れましょう.
【参考】浄水(11):フッ素で虫歯予防?


他にも,毒性というより水道管での沈殿物の生成が問題となるFeやMnについては供給前に除去しておくことが必要です.
 \mathrm{ 4Fe^{2+} + O_2 + 6H_2O \longrightarrow 4FeOOH \downarrow + 8H^{+} }
 \mathrm{ 2Mn^{2+} + O_2 + H_2O \longrightarrow MnO_2 \downarrow + 4H^{+} }


2.沈澱による除去

金属イオンの除去には,アルカリ性にして沈殿させる方法と酸化反応により沈澱させる方法があります.


重金属イオンは,酸性条件では金属イオンMn+として溶けていますが,アルカリ性にしていくとM(OH)nとなって沈殿します.さらにpHを高くすると今度は[M(OH)n+1]-となって再び溶解します.


例えばAlはpH5以下ではAl3+として溶けていますが,pH7付近ではAl(OH)3として沈殿します.そしてpH9以上になると[Al(OH)4]-として再溶解します.
 \mathrm{ Al^{3+} + 3H_2O \longrightarrow Al(OH)_3 + 3H^{+} }
 \mathrm{ Al^{3+} + 4H_2O \longrightarrow Al(OH)_4^{-} + 4H^{+} }


一方,マンガンは酸化反応によっても取り除くことができます.


例えば水中に溶けているFe2+エアレーションにより供給される酸素による酸化で沈殿します*1
【参考】浄水(5):ガスを追い出すには?

 \mathrm{ 4Fe^{2+} + O_2 + 6H_2O \longrightarrow 4FeOOH \downarrow + 8H^{+} }

ドイツのCharlottenburgでは1874年にこの現象を利用した鉄除去設備を導入しています.エアレーションにより沈殿させたあと,ろ過により取り除いていたようです.


オゾンO3塩素Cl2,過マンガン酸イオンMnO4-によっても酸化による沈殿を引き起こすことができます.
 \mathrm{ 2Fe^{2+} + 3H_2O + O_3 \longrightarrow 2FeOOH + 4H^{+} + O_2 }
 \mathrm{ 2Fe^{2+} + 4H_2O + Cl_2 \longrightarrow 2FeOOH + 2Cl^{-} + 6H^{+} }
 \mathrm{ 3Fe^{2+} + KMnO_4 + 4H_2O \longrightarrow 3FeOOH + MnO_2 + K^{+} + 5H^{+} }


Fe2+の酸化反応は水中の有機化合物によっても影響をうけます*2.例えばタンニン酸やフミン酸が含まれていると酸化されづらくなります.このような場合は有機化合物を活性炭に吸着させるなどして除去するのが効果的です.


マンガンは通常原水にMn2+として溶けています.これをアルカリ性にして除去するにはpHを12以上にしなくてはならず大変です.一方,エアレーションにより酸素が供給されると,Mn2+が酸化されてMnO2として析出します.
 \mathrm{ 2Mn^{2+} + O_2 + 2H_2O \longrightarrow 2MnO_2 \downarrow + 4H^{+} }

エアレーションによるマンガンの除去は1889年のZutphen(オランダ)で実施されていました.


マンガン浄水場で取り除いておかないと,水道管内で黒いMnO2が生成して大変です.パイプ内にこびりつきふさいでしまうこともありますし,MnO2を含む黒い水では洗濯もできません.


マンガンの除去が注目されたのは1906年のドイツでおきたBreslauの悲劇がきっかけだったと言われています.

ヴロツワフ(ドイツ語ではBreslau.現在のポーランド西部の都市)

Breslauでは直前にかOder川からの取水をやめて地下水の利用に切り替えていたのですが,川が氾濫した際に土壌から一気にマンガンが溶け出して浄水場のキャパシティを超え,水道システムが使い物にならなくなってしまいました.これをきっかけにマンガンは除去すべきだという認識が広まり,エアレーションとろ過の組み合わせが普及しました.


マンガンオゾンO2塩素Cl2,過マンガン酸イオンMnO4-と反応させても沈殿します.
 \mathrm{ Mn^{2+} + O_3 +5H_2O \longrightarrow MnO_2 + O_2 + 2H^{+} }
 \mathrm{ 3Mn^{2+} + 2H_2O +Cl_2 \longrightarrow MnO_2 + 4H^{+} + 2Cl^{-} }
 \mathrm{ 3Mn^{2+} + 2H_2O + 2MnO_4^{-} \longrightarrow 5MnO_2 + 4H^{+} }


塩素Cl2との反応によるMnO2の沈殿は,塩素消毒において問題となったことがあります.日本でかつて消毒目的で塩素を加えた時,水道水中に含まれる微量マンガンイオンが塩素と反応して黒いMnO2の沈殿が生じ,水が黒くなるいわゆる「黒い水問題」が日本全国で話題となりました.現在でも残留塩素との反応により黒い水が生じることがあるようです.
【参考】浄水(3):ろ過や塩素による消毒
【参考】浄水(4):いろんな消毒方法


さて,酸化反応により生じるMnO2はなかなか沈殿しきるような大きさまで育ちません.このような場合,ミョウバンAl2(SO4)3などを添加して凝集させて沈殿させるのが効果的であることが知られています*3
【参考】浄水(1):にごりをとるには?


一方で,Mn2+に対してオゾンのように強い酸化剤を過剰に用いてしまうと酸化され過ぎてMnO4-を生じてしまい,水がピンク色になります.ちょっと嫌ですね.
 \mathrm{ 2Mn^{+} + 5O_3 + 3H_2O \longrightarrow 2MnO_4^{-} + 5O_2 + 6H^{+} }

3.イオン交換による除去


水に含まれているイオンは,イオン交換と呼ばれる現象により除去することができます.例えば陽イオン交換樹脂は主にCa2+やMg2+を取り除く軟水化で使われます.
【参考】浄水(8):軟水化の歴史

 \mathrm{ 2 \overline{RSO_3^{-} Na^{+} } + Ca^{2+} \longrightarrow \overline{(RSO_3^{-})_2 Ca^{2+} } + 2Na^{+} }


上記反応式より,Na+のくっついた陽イオン交換樹脂にCa2+を含む水を流すとCa2+が取り除かれ,流れ出た水にはNa+が含まれることがわかります.


ずっとこの水を流し続けると,やがて陽イオン交換樹脂にくっついたNa+が少なくなり,イオン交換が起きづらくなります.そうすると流れ出た水に交換されなかったCa2+が含まれるようになります.


流れ出た水に含まれるイオン濃度を監視していると,理想的には下の図のようにイオン濃度が変化します.

陽イオン交換樹脂は他の金属イオンの除去にも使用可能です.例えばRa2+Ba2+はより効率的に取り除かれます.
 \mathrm{ 2 \overline{RSO_3^{-} Na^{+} } + Ra^{2+} \longrightarrow \overline{(RSO_3^{-})_2 Ra^{2+} } + 2Na^{+} }


このようなイオン交換が成立するのは,樹脂に対する各イオンの親和性が異なるからです.陽イオンは殿下の大きなものほど樹脂への親和性が高く,
 \mathrm{ Th^{4+} > Al^{3+} > Ca^{2+} > Na^{+} }

同一電荷のイオンでは原子番号の大きなものほど親和性が高いです.
 \mathrm{ Ba^{2+} > Sr^{2+} > Ca^{2+} > Mg^{2+} > Be^{2+} }


より一般的に,樹脂へのくっつきやすさを基準に各イオンを並べると次のようになります.
 \mathrm{ Ra^{2+} > Ba^{2+} > Pb ^{2+} > Sr^{2+} > Cu^{2+} > Ca^{2+} > Zn^{2+} > Fe^{2+} > Mg^{2+} }
 \mathrm{> K^{+} > Mn^{2+} > NH_4^{+} > Na^{+} > H^{+} }


これをみると,Ca2+やRa2+の方がNa+よりも樹脂への親和性が高いことがわかります.そのため,Na+のくっついた陽イオン交換樹脂にCa2+やRa2+を含む水を流すと,イオン交換が起きてこれらのイオンが取り除かれるというわけです.一方で,流れ出た水にはNa+が多く含まれることになります.


陰イオンの除去には陰イオン交換樹脂が使われます.取り除かれるのは硝酸イオンNO3-,ヒ酸イオンAsO43-,クロム酸イオンCrO42-,セレン酸イオンSeO2-,炭酸CO3-などがあります.
 \mathrm{ \overline{R_4N^{+} OH^{-} } + NO_3^{-} \longrightarrow \overline{R_4N^{+} NO_3^{-} } + OH^{-} }


陰イオン交換について樹脂への親和性は次のようになります.
 \mathrm{ UO_2(CO_3)_3^{4-} > ClO_4^{-} > CrO_4^{2-} > SeO_4^{2-} > SO_4^{2-} > HAsO_4^{2-} > HSO_4^{-} > NO_3^{-} }
 \mathrm{> Br^{-} > SeO_3^{2-} > HSO_3^{-} > NO_2^{-} > Cl^{-} > BrO_3^{-} > HCO_3^{-} > CH_3COO^{-} > F^{-} }

そのため,上記の例ではOH-のくっついた陰イオン交換樹脂にNO3-を含む水を流すと,イオン交換が起きて取り除かれるというわけです.


以上の陽イオン交換樹脂,陰イオン交換樹脂は,水に単一のイオンが含まれている場合でした.一方で,複数のイオンが含まれている水を流した場合はどのようになるのでしょうか?


例えばNa+のくっついた陽イオン交換樹脂にRa2+, Ba2+, Ca2+, Mg2+, Na+を含む水を流してみましょう.


もちろん,これらのイオンはまずNa+と交換され,Na+のみが流れ出ます.
 \mathrm{ 2 \overline{RSO_3^{-} Na^{+} } + Ra^{2+} \longrightarrow \overline{(RSO_3^{-})_2 Ra^{2+} } + 2Na^{+} }
 \mathrm{ 2 \overline{RSO_3^{-} Na^{+} } + Ba^{2+} \longrightarrow \overline{(RSO_3^{-})_2 Ba^{2+} } + 2Na^{+} }
 \mathrm{ 2 \overline{RSO_3^{-} Na^{+} } + Ca^{2+} \longrightarrow \overline{(RSO_3^{-})_2 Ca^{2+} } + 2Na^{+} }
 \mathrm{ 2 \overline{RSO_3^{-} Na^{+} } + Mg^{2+} \longrightarrow \overline{(RSO_3^{-})_2 Mg^{2+} } + 2Na^{+} }


ずっと続けていると陽イオン交換樹脂にくっついたNa+が少なくなり,今度は陽イオン交換樹脂にくっついたMg2+が水中のRa2+, Ba2+, Ca2+がと交換するようになります.結果として,流れ出た水中にMg2+が多く含まれるようになります.
 \mathrm{ \overline{(RSO_3^{-})_2 Mg^{2+} } + Ra^{2+} \longrightarrow \overline{(RSO_3^{-})_2 Ra^{2+} } + Mg^{2+} }
 \mathrm{ \overline{(RSO_3^{-})_2 Mg^{2+} } + Ba^{2+} \longrightarrow \overline{(RSO_3^{-})_2 Ba^{2+} } + Mg^{2+} }
 \mathrm{ \overline{(RSO_3^{-})_2 Mg^{2+} } + Ca^{2+} \longrightarrow \overline{(RSO_3^{-})_2 Ca^{2+} } + Mg^{2+} }


そうすると,下の図のように出てきた水中に含まれるMg2+の濃度の方が注いだ水中の濃度よりも高くなります.このような状況は一時的で,やがて元の濃度に落ち着いていきます.

次はCa2+が,次にBa2+が,最後にRa2+が流れ出てきます.


以上のように,複数のイオンが含まれる場合は,流れ出た水中のイオン濃度が一時的に注いだ水よりも高くなることがあります.これがNO3-のように毒性のあるイオンだと大変です*4.こういった場合は,イオン親和性の順番が異なる特殊なイオン交換樹脂を並行して用いるのが一つの解決手段です.

4.活性アルミナによる除去

さて,イオン交換樹脂を使えば様々なイオンが取り除けることが分かりましたが,その除去効率は樹脂への吸着性に大きく依存していました.樹脂への吸着性の低いフッ化物イオンF-などについては,樹脂ではない別の材料を検討する必要があります.


酸化アルミニウムAl(OH)3を300-600℃で脱水して得られる活性アルミナ*5は,活性炭と同様にたくさん細かいトンネルのある多孔質の構造をした酸化アルミニウムAl2O3です.1 gあたり50-300 m2の表面積を有しています.

活性アルミナ By GOKLuLe 盧樂 - Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=15494373

活性アルミナの表面はpH 8.2以下で正に帯電し,陰イオンをよく吸着します.例えば塩酸HClで前処理すると,活性アルミナ表面にH+がくっついて正に帯電すると同時に陰イオンであるCl-もくっつきます.これを以下のように表してみましょう.上線がついているものは,固体(ここでは活性アルミナ)にくっついた状態であることを示します.
 \mathrm{ \overline {Alumina \cdot HOH} + HCl \longrightarrow \overline{Alumina \cdot HCl } + H_2O }


活性アルミナへの陰イオンの親和性は,樹脂の場合と大きく異なります.実際に並べてみると,
 \mathrm{ OH^{-} > H_2AsO_4^{-}, Si(OH)_3O^{-} > F^{-} > HSeO_3^{-} > SO_4^{2-} > CrO_4^{2-} }
 \mathrm{ >> HCO_3^{-} > Cl^{-} > NO_3^{-} > Br^{-} > I^{-} }

となり,陰イオン交換樹脂の場合(下記)と全然違います.フッ化物イオンF-に着目すると違いがよくわかります.
 \mathrm{ UO_2(CO_3)_3^{4-} > ClO_4^{-} > CrO_4^{2-} > SeO_4^{2-} > SO_4^{2-} > HAsO_4^{2-} > HSO_4^{-} > NO_3^{-} }
 \mathrm{> Br^{-} > SeO_3^{2-} > HSO_3^{-} > NO_2^{-} > Cl^{-} > BrO_3^{-} > HCO_3^{-} > CH_3COO^{-} > F^{-} }

さて,活性アルミナであればフッ化物イオンF-を取り除けそうです.塩酸で前処理した活性アルミナにHFがやってくると,親和性の順序より,活性アルミナにくっついていた塩化物イオンCl-と交換されます.
 \mathrm{ \overline {Alumina \cdot HCl} + HF \longrightarrow \overline{Alumina \cdot HF } + HCl }

0.25-0.5 NのNaOH水溶液を加えると,活性アルミナ表面上のH+はNa+に交換され,F-はOH-に交換されます
 \mathrm{ \overline {Alumina \cdot HF} + 2NaOH \longrightarrow \overline{Alumina \cdot NaOH } + NaF + H_2O }

最後にHClで処理すると,再びHFと交換できるようになります.
 \mathrm{ \overline {Alumina \cdot NaOH} + 2HCl \longrightarrow \overline{Alumina \cdot HCl } + NaCl + H_2O }


通常の陰イオン交換樹脂だとフッ化物イオンF-を取り除くのは難しいですが,親和性の順序の違う活性アルミナを用いればこのように除去することができます*6

5.まとめ

毒性のあるものや沈殿物の生成が問題となるイオンについては,常にどの程度水に含まれているか監視しておく必要があります.


井戸水は高濃度の要注意物質が含まれている場合もありますので,使用する際は気をつけましょう.


次回は金属製の水道管の腐食やそれを防ぐ方法について見てみましょう.

問題

Q.原水をCl-のくっついた陰イオン交換樹脂に通し,出てくる水に含まれるイオンの濃度変化を追跡する実験がアリゾナ州アメリカ)で行われました.下のA,B,CはそれぞれNO3-,Cl-,HCO3-のいずれかなのですが,どれがどれでしょう?


A.陰イオン交換樹脂の親和性は以下の通り.
 \mathrm{ NO_3^{-} >  Cl^{-} >  HCO_3^{-}  }

はじめにCl-がくっついており,そこに水を通すのでAは徐々に濃度が落ちていくCl-,BはHCO3-,Cは最も親和性の高いNO3-


このように,NO3-は溶出時に一時的に元の濃度より高くなることがあります.NO3-メトヘモグロビン血症を引き起こす可能性のある要注意イオンなので,イオン交換を用いて浄水する時は気をつけなければいけません.

参考文献

Chemistry of Water Treatment, 2nd edition” S.D. Faust and O.M. Aly (1998).
”MWH's Water Treatment: Principles and Design, 3rd edition" J.C. Crittenden, et al. Wiley (2012).
"Water Quality and Treatment, 5th edition" R.D. Lettermen, The American Water Works Association (1999).
”The Quest for Pure Water" M. N. Waker, The American Water Works Association (1948).
"An encyclopedia of the history of technology" I. McNeil, Routledge (1990).
"ULLMANN'S Encyclopedia of Industrial Chemistry" Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA (2002).
"Evolution of ion-exchange: from Moses to the Manhattan Project to Modern Times" C.A. Lucy, Journal of Chromatography A 1000, 711-724 (2003).
『都市・地域 水代謝システムの歴史と技術』丹保憲仁,鹿島出版会 (2012).
「野菜に含まれる硝酸塩は毒か薬か?」 山崎 秀雄,化学と生物 57, 665-668 (2019).


目次 - 化学と歴史のネタ帳

*1:実際にFeOOHという化合物が沈澱するわけではありませんが,便宜上こう書かせてください.

*2:この他に,水中にケイ酸が含まれる場合,Fe3+の沈殿が阻害されます.  \mathrm{ Fe^{3+} + Si(OH)_4 \longrightarrow FeSiO(OH)_3^{2+} + H^{+} }

*3:MnO2のコロイドはpH5-11で負に帯電しています.

*4:AsやSeでも同様の問題が生じます.

*5:オーストリアの化学者Karl Josef Bayerが1888年に特許を取得した,いわゆるBayer法によってボーキサイトから得られます.最初の工場はロシアのサンクトペテルブルクに建てられました.

*6:もっとも,活性アルミナは劣化しやすいので繰り返し使用が難しく,フッ素に選択性の高い樹脂などが開発されているようです.