化学と歴史のネタ帳

身近にひそむ化学と歴史を,高校までの知識をベースに解説する化学史系ブログです.

酸の歴史(2):錬金術と硫酸

硫酸をはじめとした酸は,錬金術において重要な役割をはたしてきました.


その工業的製法も,はじめは錬金術で使われた手法から発展したものです.

《賢者の石を探す錬金術師》ジョセフ・ライト,1771年,油彩

硫酸の製造方法の歴史について,まずは錬金術から見ていきましょう.

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酸の歴史(1):酸とはなにか?

酸とはなんでしょう?酸っぱい物質でしょうか?それとも水素イオンを放出する物質でしょうか?


「酸とはなにか?」という疑問は化学者が長い間取り組んできた問題でもあります.

紫キャベツ抽出液の色変化 By Alessandro e Damiano - Own work, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=64830970

酸の定義の変遷については今後触れる機会があると思いますので,今回は酸の性質や指示薬,pHなど,ちょっと違った角度から酸の歴史を見ていきたいとおもいます.

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アルカリの歴史(9):戦争とアンモニア

アンモニアは肥料の原料だけでなく,火薬の原料としても重要でした.よく,ハーバーボッシュ法の発明によってドイツは戦争を決断したという話があります.


本当にそうでしょうか?

朝鮮窒素肥料 興南工場

今回はドイツ,イタリア,日本を例にハーバーボッシュ法と戦争の関わりを見ていきましょう.

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アルカリの歴史(8):ハーバー・ボッシュ法

「空気からパンをつくる」とも称されたハーバー・ボッシュ法は,現在でも活躍しているアンモニア合成法です.


いったいどのような経緯で誕生したのでしょうか?

Fritz Haber (1868-1934, 左)とCarl Bosch (1874-1940, 右)

今回はハーバー,ボッシュそれぞれの役割にフォーカスしてその経緯をみていきましょう.

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アルカリの歴史(7):アンモニアと石灰窒素

刺激臭でお馴染みのアンモニアは,よくおしっこの臭いにも例えられますね.一方で,石灰窒素はあまり聞き馴染みがないと思います.


アンモニアはどのように発見されたのでしょう?石灰窒素とはなんでしょうか?

石灰窒素工場 (1919, アメリカ)

今回はアンモニアの発見や,肥料との関わり,そしてその合成法として登場した石灰窒素法をみてみましょう.

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アルカリの歴史(6):塩化アンモニウム

刺激臭のするアンモニアは,理科実験で特に印象に残る化合物でした.


アンモニアにはどんな歴史があるのでしょう?

ソグド人商人(8世紀)

今回からは4回に分けて,アンモニアの歴史をみていきたいと思います.まずは,塩化アンモニウムからです.

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アルカリの歴史(5):電気分解

水の電気分解は,水が水素と酸素から出来ていることを知ることができる,とても良い実験です.


ところで電気分解はどのように発見されたのでしょう?

電解法による工場 (アメリカ)

今回は電気分解の発見から塩素・アルカリ製造への応用に至る歴史を,しくみとともにみていきましょう.

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アルカリの歴史(4):カリウム塩

樹木灰に含まれる炭酸カリウムは長らく炭酸ナトリウムと同一視されていましたが,やがて独立した物質だと判明しました.

Staßfurtのカリウム塩工場 By Unbekannt. Recherche:Dr. Günter Pinzke - "HUNDERT JAHRE STASSFURTER SALZBERGBAU", Anhang zu der anläßlich der Hundertjahrfeier vom Kaliwerk Staßfurt am Tage des Bergmannes 1952 herausgegebenen Festschrift, Kaliwerk Staßfurt (VEB), Staßfurt 1952., CC BY-SA 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=23288049

1851年,ドイツのStaßfurtでカリウム鉱が発見されると,ほぼ樹木灰しかなかったカリウム塩市場は大きく変化しました.その後各地でカリウム鉱が発見されましたが,土地ごとに含まれる不純物は異なりました.


カリウム塩産業の歴史は,不純物だらけの鉱石から純粋なカリウム塩を得ようとした化学者たちの苦闘の歴史でもあります.


今回は自然から天然のカリウム塩を得る方法について,歴史と共に見ていきましょう.

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アルカリの歴史(3):アンモニアソーダ法

前回紹介したルブラン法は,やがてエルネスト・ソルベイが開発したアンモニアソーダ法,別名ソルベイ法(またはソルベー法)に取って代わられました.

アンモニアソーダ法の工場 (New York, 1917)

アンモニアソーダ法とはどのような製造法なのでしょうか?


また,エルネストはその後研究所の設立や社会政策にも手を広げています.そこにはどのような思想があったのでしょうか?


今回はアンモニアソーダ法について,成立・普及の歴史としくみを見るとともに,その後のエルネストの活動の背景にあった思想についてもみてみましょう.

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アルカリの歴史(2):ルブラン法

炭酸ナトリウムは様々な工業で必要とされ,やがて最初の工業製法であるルブラン法が開発されました.

ルブラン法による炭酸ナトリウム製造炉(1890年)

ルブラン法とは,どんな製造法なのでしょうか?


今回は,ルブラン法以前の英仏の取り組みや,ヨーロッパ情勢に翻弄されたルブランの人生,環境問題とイノベーション,そして環境と経済の狭間で苦悩したアルカリ監査官の胸の内などを,仕組みを踏まえてみていきましょう.

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