化学と歴史のネタ帳

身近にひそむ化学と歴史を,高校までの知識をベースに解説する化学史系ブログです.

浄水(5):ガスを追い出すには?

変な匂いのする水って嫌ですよね.


水にはいろんなガスが溶けており,これが味や匂いなどに影響を与えています.

今回はガスを水から取り除くエアレーションという手法について,高校化学でも習うヘンリーの法則を軸にその化学と歴史をみていきましょう.




浄水(1):にごりをとるには?
浄水(2):ろ過の歴史
浄水(3):ろ過や塩素による消毒
浄水(4):いろんな消毒方法
浄水(5):ガスを追い出すには?
水(6):活性炭・微生物の活用
浄水(7):化学の力で軟水にする
浄水(8):軟水化の歴史
浄水(9):いろんな無機物の除去
浄水(10):パイプを腐食から守る
浄水(11):フッ素で虫歯予防?
浄水(12):究極の水,超純水

1.水に溶けているガス

原水には様々なガスが溶けており,味やにおいなどに影響を与えています.ガスの例として,硫化水素H2SアンモニアNH3二酸化炭素CO2,酸素O2,そしてベンゼントリハロメタンといった揮発性有機化合物(VOC)があります.

硫化水素アンモニア,揮発性有機化合物は変な匂いや味がするうえ,たいてい有害なのでぜひとも取り除きたいガスです.


二酸化炭素多く溶けていると水が酸性に傾いてしまいます.水が酸性に偏りすぎていると様々な金属が溶け出す原因にもなりますし,Ca2+と反応して炭酸カルシウムCaCO3が析出し,水道管にこびりつくといった問題もでてきます.これもある程度取り除きたいですね.
 \mathrm{Ca^{2+} + CO_3^{-} \longrightarrow CaCO_3 \downarrow}


一方で酸素ガスは一定量水に溶けることで*1マンガンを沈殿させて取り除いています.
 \mathrm{ 4Fe^{2+} + O_2 + 8OH^{-} \longrightarrow 4FeOOH \downarrow + 2H_2O }
 \mathrm{ 2Mn^{2+} + O_2 + 2H_2O \longrightarrow 2MnO_2 \downarrow + 4H^{+} }


したがって,酸素が水中で不足していると鉄やマンガンが溶け出したり,硫黄化合物が生成する原因にもなります.そのため,酸素はある程度含まれているほうが良いです.


このように美味しく安全な水を供給するうえでは,水に含まれるガスを調整することが大変重要です.

2.ヘンリーの法則

水にどの程度ガスが溶けるか,高校化学で習うのはヘンリーの法則ですね.気体のガスの分圧をp, 水に溶けたガスの水中濃度(モル分率)をCとすると,ヘンリー係数Hを用いて,以下のように表されます.
 p = HC


現在ではここに「希薄溶液で」とか「理想気体では」とか色々な条件がつきますが,1802年ウィリアム・ヘンリー (William Henry, 1775-1836) が報告した時にはそんなに難しいことは言っていません.むしろ式すら出てきません.

William Henry (1775-1836)

彼は,主に二酸化炭素の水への溶解について詳しく調べていました*2.その背景にはちょっとした歴史があります.


以前も紹介した通り,ヨーロッパでは古代ローマの頃から二酸化炭素が溶けた炭酸泉から得られる鉱泉水の効能が有難がられており,飲めば傷が治るとか健康になるとか言われていました.その後,ヤン・パブティスタ・ファン・ヘルモント (Jan Baptista van Helmont, 1579-1644) 鉱泉水に,ろうそくの火を消す性質をもつ「二酸化炭素」が溶けていることを実際に示します.
消火のしくみ(3):二酸化炭素



大航海時代(15世紀-17世紀)以降,世界各地に植民地を拡大し海洋貿易が盛んになったイギリスでは,長期間航海中の壊血病が問題となっていました.今ではビタミンC不足が原因だということがわかっていますが,ビタミンCだと確定するのは18世紀末のことです.1760年代ころは炭酸水の摂取が必要だとする説が広く信じられていました.


イギリスのジョゼフ・プリーストリー(Joseph Priestley, 1733-1804) はこの説の存在もあり,二酸化炭素を水に溶解させる装置を開発して人工炭酸水をつくることに成功します*3.このとき,彼は圧力を上げることで二酸化炭素を水に溶解させています.この功績によって彼は1772年にはCopley medalを受賞しました.


このように二酸化炭素の水への溶解方法については定性的に調べられていました.一方で,その物理化学的側面,定量的な分析については研究が進んでいませんでした.そこでイギリスの化学者ウィリアム・ヘンリーは圧力と二酸化炭素の水への溶解量の関係について詳しく調べることにしました.


彼の論文では実験器具については詳細にかかれていますが,実験データはあまり載っていません.そのため正確性については判断できませんが,彼は結論として「同じ温度,圧力であれば溶解する気体の体積は一定」であり,「圧力を2倍,3倍にすると溶解する気体の体積も2倍,3倍になる」と述べています.これはつまり,温度が一定なら水に溶解する気体の体積は圧力に比例するということです.


この「ヘンリーの法則」を検証すべく,19世紀には様々な研究者が実験を行いました.やがて19世紀後半には広く受け入れられるようになります.


さて,これがヘンリーの法則の概要となるわけですが,1つ考慮されていない点があります.それはpHです*4


ガス分子によっては,水に溶けた時に水と反応し,別の分子に変化する場合があります.例えばアンモニア硫化水素二酸化炭素では,下記のようなイオンを生じる平衡反応を考慮する必要があります.
 \mathrm{NH_3 + H_2O \rightleftharpoons NH_4^{+} + OH^{-}}
 \mathrm{H_2S + H_2O \rightleftharpoons H_3O^{+} + HS^{-}}
 \mathrm{HS^{-} + H_2O \rightleftharpoons H_3O^{+} + S^{2-}}
 \mathrm{CO_2 + 2H_2O \rightleftharpoons H_3O^{+} + HCO_3^{-}}


ヘンリーの法則は空気と水を同種の分子が行ったり来たりする場合に成立しています.したがって,生じたイオンとの間には適用されません*5


試しに硫化水素について考えてみましょう.
 \mathrm{H_2S + H_2O \rightleftharpoons H_3O^{+} + HS^{-} \qquad K_1 = 1 \times 10^{-6.9}}
 \mathrm{HS^{-} + H_2O \rightleftharpoons H_3O^{+} + S^{2-} \qquad K_2 = 1 \times 10^{-13.5}}

H3O+をH+とすると,「溶けた硫化水素のうち何%がH2として存在しているか?」は以下のように表されます.
 \displaystyle{ \% H_2S = 100 \times \frac{ [ \rm{H^{+}} ]^2}{[ \rm{H^{+}} ]^2 + K_1[\rm{H}^{+}] + K_1K_2} }

すると,例えばpH8 ([H+] = 1×10-8) では溶解した硫化水素のうち約10%しかH2Sとして存在していません.ヘンリーの法則は水に溶けた硫化水素のうち約10%にしか適用されませんので,結果的により多くの硫化水素が溶解することになります.


このように,ガスが水と反応する場合は注意が必要です.一方で,酸素のように水と反応しづらい分子の場合はヘンリーの法則が比較的成り立ちます.


このようなガスの性質の違いは,水からガスを追い出す際に重要になります.

3.エアレーションによるガスの除去

炭酸水二酸化炭素高圧下で水に溶け込ませて製造され,ペットボトル内に密封されます.このとき,炭酸水中の二酸化炭素濃度をC1としてヘンリーの法則が以下のように成り立っているとしましょう.電離はひとまず考えません.
 p_{CO2, bottle} = H C_1


常温常圧でフタを開けると,ご存知のように溶けていた二酸化炭素が泡となってブクブク出てきます.これは,空気中の二酸化炭素分圧pCO2, airがペットボトルを開ける前の分圧pCO2, bottleより低いため,空気中の二酸化炭素分圧pCO2, airから考えると炭酸水中の二酸化炭素濃度C1が高すぎるからだと考えられます.
 p_{CO2, air} < H C_1


そうすると,つり合いのとれる濃度C2へと低下するまで二酸化炭素が炭酸水からどんどん泡となって抜けていきます.
 p_{CO2, air} = H C_2


つり合いが取れるまで炭酸水から二酸化炭素ガスが抜けきるには,やや時間がかかります.これを早くするにはペットボトルを振ってかきまぜ,空気と炭酸水の接触面積を増やしてあげるのが効果的です.これがエアレーションです.


ガスが抜ける速度は,ヘンリー係数が大きく関係しています.詳しくみていきましょう.


ガスが抜ける場合に空気と溶液の界面付近での濃度を単純化して考えると,以下のようになっていると考えられます.

ちょうど界面のところではヘンリーの法則が成り立ちます.
 y_{界面} = H C_{界面}


ここでガスが溶液から出ていく速度をk(C0-C界面),ガスが空気中に入ってくる速度をk(y0-y界面)とすると,この2つは等しいはずです.
 k_液 (C_0 - C_{界面}) = k_気(y_0 - y_{界面} )


エアレーションにおいては溶液側にのみ濃度勾配があると考えても差し支えありません.この場合,速度は係数KLを用いて,KL(C0-C界面*)と表されます.ガスの移動速度はどちらのモデルでも同じはずですので,
 k_液 (C_0 - C_{界面}) = k_気(y_0 - y_{界面} )= K_L (C_0 - C_{界面}^{*})

となります.さらに,図よりそれぞれの濃度の間には以下の関係式があります.
 (C_0 - C_{界面} ^{*}) = (C_0 -C_{界面}) + (C_{界面}- C_{界面}^{*})


これらの式から,次の式が成り立ちます.
 \displaystyle{ \frac{1}{K_L} = \frac{1}{k_水} + \frac{1}{Hk_気}}


上式より,ヘンリー係数Hが大きい時,KLもまた大きくなることがわかります.これはすなわち,ガスの除去速度が大きくなることを示しています*6


このように,エアレーションによるガスの除去はヘンリーの法則を用いて考えることができ,除去速度はヘンリー係数に依存しています.酸素不足の水に酸素ガスを供給する場合も,同様に考えることができます.

4.エアレーションの注意点

エアレーションによるガス除去の際にはいくつか注意すべきことがあります.


Ca2+を多く含む硬水の場合,エアレーションによりCO2ガスを除去すると下に示す平衡反応が右にかたよります.
 \mathrm{ Ca(HCO_3)_2 \rightleftharpoons CaCO_3 \downarrow + CO_2 \uparrow + H_2O }

そのため,生じたCaCO3がエアレーション設備の内部に析出してしまいます.


また,エアレーションにより水中の酸素濃度が高くなるためFe2+が沈殿しやすくなります.
 \mathrm{ 4Fe^{2+} + O_2 + 8OH^{-} \longrightarrow 4FeOOH \downarrow + 2H_2O }

CO2ガスの除去によってpHも高くなりますので,沈殿反応はより促進されます.


このような析出を防ぐためには,事前にCa2+やFe2+を除去しておくことが重要です.


さて,ガスが硫化水素アンモニアのように水と相互作用して別の分子になる場合,エアレーションによるガスの除去効率が下がってしまいます


例えば硫化水素の場合,pH8では約10%しかH2Sの状態になっていません.そのため,ヘンリーの法則から考えられる除去速度はかなり落ちます.例え瞬間的にエアレーションでガスが抜けたとしても,pH8では1割しか取り除けません.一方でpH6であれば,9割以上がH2Sとして存在しますので,エアレーションで効率よく取り除けます.


アンモニアの場合はどうでしょうか?
 \mathrm{NH_3 + H_2O \rightleftharpoons NH_4^{+} + OH^{-} \qquad K_b = 1 \times 10^{-4.6}}

計算より,アンモニアはpH7ではほとんどがNH4+であることがわかります.そのため,通常はエアレーションだけでは効率よく除去できないので下水処理で行われているようにpHを高くして中性分子のNH3に戻してからエアレーションするか,他の方法による除去を検討する必要があります.

5.塩素ガスによるアンモニアの除去

アンモニアの除去には塩素ガスが有効です.殺菌効果の話については前回説明したので割愛し,アンモニア除去の原理をみていきましょう.
【参考】水(4):いろんな消毒方法


塩素ガスは水に溶けるとただちに次亜塩素酸HClOを生じます*7
 \mathrm{Cl_2 + H_2O \longrightarrow H^{+} + Cl^{-} + HClO }


HClOはNH3と順次反応します.
 \mathrm{NH_3 + HClO \longrightarrow NH_2Cl + H_2O }
 \mathrm{NH_2Cl + HClO \longrightarrow NHCl_2 + H_2O }
 \mathrm{NHCl_2 + HClO \longrightarrow NCl_3 + H_2O }

pHが7-9の条件では,Cl2の物質量がNH3と等しくなるまではモノクロラミンNH2Clの生成がメインとなります.ここを超えてくると,ジクロラミンNHCl2,トリクロラミンNCl3の生成のほか,窒素ガスN2が生成します.
 \mathrm{2NH_2Cl + HClO \longrightarrow N_2 + H_2O + 3H^{+} + 3Cl^{-} }


結果として,水中のNH3N2としてどんどん取り除かれていきます.


このように塩素ガスの添加によりアンモニアが取り除かれ,残ったクロラミンは殺菌能力を有するため良いことづくめのように感じられますが,今度はクロラミンそのものの「カルキ臭」が問題となります.とはいえ,煮沸したり撹拌によるエアレーションなどで簡単に取り除くことはできますので,そこまで大きな問題ではないかもしれません.


この他にもイオン交換による除去や微生物の力を借りるなどの方法が考えられます.
【参考】水(6):活性炭・微生物の活用

6.エアレーションの歴史

さて,異臭や変な味の原因となるガスを水から取り除くエアレーションにはどのような歴史があるのでしょうか?


川や滝で泡立っている水のほうが,よどんだ水より美味しいことは大昔の人も気づいていたようです.


古代ギリシャの哲学者テオプラストス (前371-前287) は「流れている水のほうが良く,やわらかい」と言っていますし,1-2世紀のインド医学書チャラカ・サンヒター』には「川で岩にぶつかってしぶきをあげる水のほうがきれいで透明になる」と書かれています.ペルシアの哲学者イブン・スィーナー (980-1037) は井戸や水路に閉じ込められた水を使うことに反対しており,太陽や風にさらされ流れる水を使うことを推奨しています.


このように,流れる川の水は「天然のエアレーション」によってきれいになっているらしいという考えは18世紀末まで2000年近く信じられるようになりました.


18世紀になると,今度は「人工のエアレーション」によって水をきれいにしようとする試みが始まります.


イギリスティーヴン・ヘールズ (Stephen Hales, 1677-1761) 水上置換法の発明で知られる化学者です.水に溶けにくい気体を水上で集める方法ですね.

Stephen Hales (1677-1761) By Mezzotint by J.McArdell after T. Hudson. - https://wellcomeimages.org/indexplus/image/V0002504.html, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=33699928

彼は1755年,船大工のLittlewoodに「船に保管されている臭い水は,ふいごで空気を送りぶくぶくと泡をたてることでにおいが和らぐ」ということを教えたそうです.

Halesはさらに,水に空気を送ることで魚を何マイルも運び続けることができるとも言っています.私達も水槽で魚を飼う際には空気を送っていますね.水上置換法の発明者が考えたと聞くと,なるほどと納得させられます.


この少し前 (1763-1764年) のフランスでは,セーヌ川の水をろ過し,さらに空気とふれさせることでエアレーションした水を販売するプランがJean Baptiste Molin de MontbruelやNicolas Ferrandの手によって実行に移されました.


パンフレットを見る限り,当時の最先端の技術を駆使したかなりきれいな水が得られたようです.しかしながら当時の市民はそんなにきれいな水を求めておらず,またこれまで通りの湧き水を使いたがっていたために彼らの水の売れ行きはあまり良くなかったようです.


その後,パリでは1806年になると,ろ過した水を空気中にシャワー状に降らせてエアレーションするタイプの浄水施設がセルスタン通りで稼働しはじめます.

フランスでは1820年代になると,小さな滝が連なるカスケード型のエアレーターが稼働し始めます.このタイプでは,ろ過とエアレーションが繰り返され,きれいな水が得られます.カスケード型はその後,1848年にはスコットランドグラスゴーで,1860年代にはロシアのサンクトペテルブルクで,1888年にはアメリカのニューヨークで稼働していたようです.

この他にも,様々なエアレーション技術が考案されていきます.例えば1860年頃にはニューヨークで噴水型,1876年以降にはマルチジェット型が稼働しています.


その他,重要なエアレーション技術としてはmultiple-tray, packed towerなどがあります.水流をランダム化する部品を活用したもので,空気との接触面積をかせぐことができます.
https://amacs.com/mass-transfer/random/


7.まとめ

空気と混ぜるだけで水の変な匂いが取り除けると聞くと不思議な気がしますが,原理を知ると納得ですね.


最近では半透膜を使用することで溶存ガスを取り除く技術もあります.超純水の製造において重要です.
【参考】浄水(12):究極の水,超純水


硫化水素H2Sや揮発性有機化合物(VOC)などのガスは活性炭によっても効率的に除去することができます.次回はその辺りをみていきましょう.

問題

Q. ヘンリー係数Hcを実際に測定してみましょう.下のように2つの容器1, 2を用意します.それぞれ水がVw1 (L),Vw2 (L)入っており,空間部分はVg1 (L),Vg2 (L)です.

ある物質をM1 (mol),M2 (mol)加えたとき,空間部分の濃度がCg1 (mol/L),Cg2 (mol/L)になりました.ここで,水中濃度Cw1 (mol/L),Cw2 (mol/L) を用いてヘンリー係数Hcを以下のように定義します.
 \displaystyle{ H_c = \frac{C_{g1} }{C_{w1} } =  \frac{C_{g2} }{C_{w2} }}

(1) M1をHc,Cg1,Vw1,Vg1で表しましょう.

(2) M1=M2のとき,HcをCg1,Cg2,Vw2,Vw2,Vg1,Vg2で表しましょう.

(3) M1≠M2のとき,HcをCg1,Cg2,Vw2,Vw2,Vg1,Vg2,M1,M2で表しましょう.




A.
(1) ヘンリー係数の定義より,
 \displaystyle{ M_1 = C_{w1}V_{w1} + C_{g1}V_{g1} = C_{g1} \left( \frac{V_{w1} }{H_c} + V_{g1} \right) }


(2) M1=M2より,(1)の結果から,
  \displaystyle{ C_{g1} \left( \frac{V_{w1} }{H_c} + V_{g1} \right) = C_{g2} \left( \frac{V_{w2} }{H_c} + V_{g2} \right) }

 \displaystyle{ H_c = \frac {C_{g2}V_{w2} - C_{g1}V_{w1} }{C_{g1}V_{g1} - C_{g2}V_{g2} } }


(3) M1,M2でそれぞれ割ると等しいので,
  \displaystyle{ \frac{C_{g1}}{M_1} \left( \frac{V_{w1} }{H_c} + V_{g1} \right) = \frac{C_{g2}}{M_2} \left( \frac{V_{w2} }{H_c} + V_{g2} \right) }

 \displaystyle{ H_c = \frac {M_1C_{g2}V_{w2} - M_2C_{g1}V_{w1} }{M_2C_{g1}V_{g1} - M_1C_{g2}V_{g2} } }



このようなヘンリー係数の測定方法はEPICS (Equilibrium Partitioning in Closed Systems) と呼ばれます.1980年代に考案されました.意外と最近ですね.



参考文献

Chemistry of Water Treatment, 2nd edition” S.D. Faust and O.M. Aly (1998).
”MWH's Water Treatment: Principles and Design, 3rd edition" J.C. Crittenden, et al. Wiley (2012).
"Water Quality and Treatment, 5th edition" R.D. Lettermen, The American Water Works Association (1999).
“Drinking Water and Health, Volume 1” National Research Council (US) Safe Drinking Water Committee (1977).
”The Quest for Pure Water" M. N. Waker, The American Water Works Association (1948).
"Measurement of Henry’s Law Constants for C1 and C2 Chlorinated Hydrocarbons" J.M. Gossett, Environ. Sci. Technol. 21, 202-208 (1987).
「『舎密開宗』周辺の図像とラヴォアジエ前後の西欧化学史」河野俊哉,化学史研究, 49, 17-29 (2022).
『都市・地域 水代謝システムの歴史と技術』丹保憲仁,鹿島出版会 (2012).
”Henry's Law: A Historical View" J.J.Carroll, J. Chem. Educ. 70, 91-92 (1993).


目次 - 化学と歴史のネタ帳

*1:実際にFeOOHという化合物が沈澱するわけではありませんが,便宜上こう書かせてください.

*2:他にもH2SやN2O,O2も調べています.

*3:プリーストリーは膀胱に入った二酸化炭素を使用して炭酸水をつくっていましたが,膀胱の匂いが移るのを嫌ったスコットランドの医師ジョン・メルヴィン・ヌース (John Mervin Nooth, 1737-1828)は,ガラス製の装置を開発しています.

*4:実在気体ではガス分子同士の相互作用などを考える必要がありますが,ここでは割愛します.

*5:イオンそのものも揮発性はありません

*6:このほか,水と空気の接触面積が高いほどガスの除去速度が早くなります.これはエアレーションの方法に大きく依存します.

*7:1℃で1秒以内に進行します.化学反応式より本反応はpH依存であることがわかります.また,HClOも弱酸ではありますが,ここでは割愛します.